前回のおさらいになりますが、検脈で異常を感じたら、症状がなくとも早めに心臓専門医を受診しましょう。
特にリズムが規則的ではなく、脈のリズムがばらばらの時には心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈かもしれません。
この不整脈は、第2回で述べた分類でいえば、頻脈性の不整脈に該当します。

心房細動とは?

心房細動は治療が必要な不整脈の中では最も一般的にみられる不整脈で、高齢になるほどその頻度が高くなり、80歳以上ではおおむね10人に1人は心房細動があるといわれています。
この不整脈が厄介なのは、心臓の中で血液の固まりを作り、それが血管の中を移動して脳の血管を詰まらせ、脳梗塞の原因になることです。
心房細動をもつ人は、通常の人に比べて脳梗塞の割合が5倍高まるといわれています。
脳梗塞を起こした人を調べると、実は心房細動が原因であったということが少なくありません。
心房細動が原因で脳梗塞を起こすと、ひどい後遺症を残し、社会復帰が困難になることはもちろん、寝たきりになることも少なくありません。
ですから、脳梗塞を起こす前に、この心房細動を見つけて予防することが重要なのです。
心房細動によくみられる症状としては「ドキドキする」「息が切れやすい」「めまい、ふらつき」などがありますが、何度も申し上げるように全く症状がないことも多いので、日頃からの検脈が大事なのです。

寝たきりになると、1人あたり年間の300万もの医療費がかかり、世話する家族の人生まで一変させてしまいます。
ですから、検脈でおかしいなと思ったら、診断には心電図検査が必要ですので、早めに医師の診察を受けましょう。
心房細動と診断されたら、その後の治療をどうするのか、これについては次回お話ししましょう。

不整脈は必ず病院で心電図をとって診断されます。
肝心なのは不整脈を疑い、病院を受診するきっかけとなるような徴候があるかどうかです。
「胸がドクドクする」など具体的な症状がなければ、なかなか病院を受診することはないものです。
しかし、症状がなくとも不整脈を疑う方法があることを皆さんにぜひ知って頂きたいと思います。

みなさんは自分の脈を触れてみたことがありますか?

手首の親指の付け根のあたりを、もう一方の手の人差し指と中指、薬指の3本の指で押さえてみてください(少し指先を立てると触れやすくなります)。

図

すると橈骨(とうこつ)動脈という血管の拍動を感じ取ることができます。

15秒くらい拍動を触れて、間隔が規則的かどうか、確かめてください。
これを検脈といいます。要するに自分で自分の「脈をとる」ということですね。
高齢の方ではご家族の方に、検脈を手伝っていただいてもよいと思います。
普段の脈の状態をこの検脈で調べておくことは大事です。

これが規則的ではなく、脈のリズムが乱れている、跳んでいると感じたら、それが不整脈を早く診断する一つのきっかけになるからです。
不整脈は心臓がドキドキするなどの症状があるとは限りません。
普段の生活の中で症状は全くないことも多いのです。

大切なことなので繰り返しますが、症状がないからといって不整脈がないということにはなりません。
特に高齢の方では症状を感じにくくなる傾向がありますので不整脈の発見が遅れやすく、ご家族の方の協力で検脈をしていただくことが大事です。
この検脈で異常を感じたら、症状はなくとも心臓専門の先生のところを受診しましょう。
そのままにしておくと危険な場合もあるからです。

それではどういった危険が潜んでいるのでしょうか?

続きは次回へ。

通常、成人の脈拍数は個人差がありますが、1分間に60~100回程度で、一定の間隔で規則正しいリズムを刻んでいます。普通は整ったリズムであるのが、不整脈はその名の通り「脈が整っていない」ことを意味しています。不整脈、つまり脈が整っていないとはどういうことかというと・・大体この3つの種類になると思います。

1. 極端に脈が遅い(徐脈性不整脈)
徐脈(じょみゃく)といって、若い人でスポーツ心臓のように脈が遅めの人はいますが、徐脈性の不整脈として、一般に検査と治療の対象になるのは、少なくとも脈が1分間に50以下の場合になります。極端なケースでは突然、脈が数秒間打たなくなるものもあります。

2. 極端に脈が早い(頻脈性不整脈)
脈が1分間に100以上になることを頻脈(ひんみゃく)といいますが、日常生活の中で運動したり、緊張や興奮が高まると脈が100以上になるのは、もちろん不整脈とはいいません。頻脈性の不整脈として、一般に精査治療の対象になるのは、正常の脈拍から突然に脈が140~150以上に上昇し、数秒から数分後に突然正常に戻るような場合をいいます。また、安静にしているのに常に脈が90~100以上あるというケースも不整脈の場合があります。

3. 脈が跳ぶ(期外収縮)
脈のリズムが乱れることをいい、一定のリズムから一瞬、脈が跳ぶ状態になるものを期外収縮(きがいしゅうしゅく)といいます。この不整脈は比較的若い方でみられます。

実際の不整脈の患者さんは、脈が遅くなったり速くなったりする人や、脈が速く跳んだり、または遅く跳んだりする人もいますが、ここでは簡単にわかりやすく、不整脈とは脈が遅くなるか、速くなるか、跳ぶかのどれかにあたると覚えておきましょう。1.2.3のそれぞれにいくつかの種類の不整脈があり、治療の方法も違いますが、その内容については後日説明することにして、それではこのような脈の異常はどのようにしてわかるのでしょうか?これは次回に。

不整脈といっても一般の方にはなじみが薄いかもしれませんが、立派な心臓の病気の一つです。

このコラムをご覧になっているみなさんの中にも心臓がドクンとする、心臓が早鐘のように打つ、脈が乱れている、あるいは突然目の前が暗くなって意識が遠のくような感覚を経験した方がいるかもしれません。
そのような経験をした方は心臓の中の電気信号の異常が関係しているかどうか、一度心臓専門医にみていただくことをお勧めします。
心臓の筋肉の中には眼に見えない電線が張り巡らされており、これを伝わる電気の活動によって1日平均10万回拍動しています。

不整脈は平たくいえば、この心臓を伝わる電気信号の異常といえます。

この電気信号の異常にはいろんなパターンがあって、例えば発火装置に異常があったり、電線に途切れがあったり、中には余計な電線をもっているような人もいます。
このようなパターンの違いでいろんな種類の不整脈が生じるわけですね。
この中には良性で放置してよいものもありますが、生命にかかわるようなたちが悪いものもあります。

次回から不整脈について、もう少し掘り下げてみましょう。